”風のひと土のひと” 色平哲郎 医師の本棚
色平哲郎 医師プロフィール
1960年、横浜市生まれ。東大理科一類を中退し、アジアなど世界を放浪後、京大医学部へ。長野県南牧村野辺山へき地診療所長、南相木村診療所長を経て、現在は佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長。著書に『大往生の条件』など。
『若月俊一の遺言 農村医療の原点』 若月俊一(家の光協会)
さて、1冊目、何と言ってもこの方をまず先に挙げないことには、信州で医者はやっていけない。若月俊一先生の最後の著書です。いわずと知れた農村医学のバイブル。
地域医療に携わる人にはぜひ読んでもらいたいですね。
『加藤周一著作集 第23巻 現代日本私註「羊の歌その後」』 加藤周一(平凡社)
著者の加藤さんと軽井沢でお目にかかったときの印象は、優しい方だなあ、というものでした。前半生医師でもあった加藤さんが『みんなのものである医療を権威づけや金もうけに使ってはいけない』と常々語っていた姿を思い起こします。日本の医療が今後どうなっていくのか、彼を手本にしながら見据えていきたいものです。彼は自衛隊の海外での武力行使に反対し、『9条の会』を設立した反戦の歴史家です。その加藤周一さんが2008年12月5日に89歳で亡くなりました。知識人の定義を、『仕事の社会への影響、歴史的な意味を問い始めることで知識人になる』と、サルトルを引用されていた方でした。まさに知識人の鏡、心からご冥福をお祈りいたします。
文学、芸術から、社会、政治論にまで及ぶ幅広い見識を持つ戦後日本を代表する知識人といえる彼の著作、1冊は読んでおきたいものです。
『ヘルプマン!』 くさか里樹(講談社)
次、実は、今回一番皆さんに推薦したいのはこの本です。コミックなんですが、くさか里樹著『ヘルプマン!』。
テーマは介護。介護という深刻な話題をコミックにしてしまったところが面白い。コミックを読んで社会を知る。しかも介護は医療の枠外ではあろうが延長線上にある世界、ですから、若い医療者にはぜひ、読んでおいてもらいたいですね。特に、シリーズの第8巻がお薦めです!認知症の老母を押しつけられた壮年期の男性が家族と共に介護に奮闘する。万策尽きて途方に暮れた末、介護ヘルパーを頼むのだが、現れたのはフィリピン人の女性ヘルパー。楽天的で面倒見がよいが、反面、文化の違いから周囲との間に軋轢を生じてしまう。今後ますます”高貴”高齢者が増える日本の将来、当然のように予想される場面といえましょう。フィリピンを通して我々日本人の家族、家庭を知る。これは本当にいい本ですよ~。
『二兎を得る経済学』 神野直彦(講談社)
次、4冊目は、元東大経済学部長 神野直彦教授の『二兎を得る経済学』です。これは経済学というよりは財政学についての本です。
21世紀の医療者にとって、財政学はますます重要です。この本はとても分かりやすく経済・財政について書かれてあって、元気が出ますよ、お薦めです。
『Where There Is No Doctor』David Werner(Macmillan Education)
5冊目は洋書です。『Where There Is No Doctor』。プライマリー・ヘルス・ケア(プライマリー・ケアとは、まったく違いますよ!)の世界的な教科書です。
文字の読めない人であっても、イラストを見れば処方や治療法がわかるように書かれていて、『医師のいないところ』での実践医療のためのガイドブックとしてホントに世界中で利用されています。これを中学生の教科書に使えば、英語を勉強することがもっと楽しくなるんじゃないでしょうか。
『後藤新平 日本の羅針盤となった男』 山岡淳一郎(草思社)
後藤新平も、前半生、医者だったんですよ。明治初年、板垣退助が刺された時、一番に岐阜の演説会場に駆けつけたのは彼でした。明治の医者はこんなに面白い(何が面白いかは読まなければ分からないでしょうけど)。簡単にいうと、近代日本が抱える矛盾を一身に背負った人物、それが後藤新平です。
若い人に彼の生き方を読んでもらって、ぜひ、感想を伺いたいですね。あの時代だからこそこんな天才的な豪傑が生まれるんでしょうけど、とにかくすごい人すごすぎる人です。現代の医療人も彼から学ぶことが多いはずですよ。私は、後藤新平さんのお孫さんと親しくしておりますが、ご存知でしょうか、鶴見俊輔さんという方です。
まだまだ、たくさん紹介したい本はありますし、映画も見てほしいですね。
ぜひ、次の機会に紹介させてください。
”寄生虫博士” 藤田紘一郎 医師の本棚
藤田紘一郎 医師プロフィール
1939年、中国・旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部を卒業後、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。医学博士。テキサス大学留学後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授東京医科歯科大学大学院教授を経て、人間総合科学大学教授、東京医科歯科大学名誉教授。2021年死去。
主な著書に、『笑うカイチュウ』『恋する寄生虫』『清潔はビョーキだ』など。
『フィラリア―難病根絶に賭けた人間の記録』 小林照幸(TBSブリタニカ)
わたしはもともと整形外科をやっておりました。柔道部に所属していたのですが、たまたま熱帯病調査団の団長とトイレで会ったのが運のつき、荷物もちとして奄美大島や沖縄の波照間島に行くことになりまして…。そこでびっくりしたのが、フィラリア。陰嚢が巨大になって。フィラリアの患者を刺した蚊に刺されると、うつるんですよ。鹿児島の住民の5%がかかっていた。
これは、わたしが同行した団長さんたちのフィラリア根絶の記録。一生懸命蚊をなくして患者さんを治療して、1978年にフィラリアを根絶しました。下っ端だったので名前は出ておりませんが、わたしも参加しています。こういう道に入ったきっかけです。それから東大の伝染病研究所に入って、寄生虫だけでなく、細菌、ウィルスなど微生物をいろいろ研究した。目は熱帯のほうに向きました。三井物産の嘱託医として6ヶ月間インドネシアのカリマンタン島にいたときに、アトピー、喘息、花粉症がないということがわかって。よく調べたら、みんなが回虫にかかっていた。日本でも、アトピーや喘息は40年前にはなかったし…。ということで、回虫がアレルギーを抑えるという研究に入りました。
『極限の民族』 本多勝一(朝日新聞出版)
そのうちに、文明っていうのはどういう意味を持つんだろうかと考え出した。回虫は追い出したし、きれいな快適な環境になってきたけど、じゃあ幸福になってきたかなと思ったとき、極限の民族はどうなっているんだろうと考えるようになったんです。
そんなときにこの本を読んで感銘を受けた。わたしもやってやろうってことで、順天堂医学部の熱帯医学研究会の若者達をつれて、カリマンタン島の奥地に何度かいきました。ダヤク族といって、全長200mくらいある大きな長屋(アパート)に一族みんなで住んでいる。しかしよくよく聞いてみたら、族長の息子はオーストラリアに留学していて、英語もしゃべれる。族長はビデオ持っているし(笑)。こんなに苦労してここまで来たのに、すごく文明社会のことを考えている。また、ダヤク族は首狩人種といわれていますが、本当はみんな優しい人たちで、首狩をするとアパートに住めなくなるんです。でも、年をとった人から死んでもらうんです。自分達で殺せないからいちおう戦争したふりして他の民族に殺してもらう。みんなも納得しているんですね、年取って邪魔になったら・・・って。それはすごく感動的だった。それ考えたら、日本は、修学旅行でもうわべだけきれいなところ見せて、うんちは汚い、ゴキブリは不快だから殺せなんてやっているわけです。命は大切だといいながらね。そういうことに対して、非常に憤慨を持っています。
『糞袋』 藤田雅矢(新潮社)
この本には、江戸時代、うんちが一番の商品価値があったと、うんちを売っている人たちのことを面白おかしく書いています。
うんちとか、ばい菌とか、世の中でいいことをしてるんだと、なんとか知らせようということで。これ書いた人は、京大の農学部出身です。実際、江戸時代は大家さんが『家賃払わなくても、うんちしてくれればいいから』って。そのうんちがものすごいいい値段になったわけです。徳川家康が関東ローム層というやせた土地に40万人の兵隊連れてきて、当時は鎖国中だったので、自分たちで食料などまかなうために、うんちを肥料にして土地を耕して、それから江戸の100万都市が出来ていったんですね。うんちはすごく高い値段で売られていたんです。そんなうんち問屋があったって話です。
『人類の自己家畜化と現代』 尾本惠市編著(人文書院)
アレルギーを抑えている回虫、ウィルス、細菌。そういうものをことごとく排除している『きれい社会』がアレルギーを作ったという研究をしてきましたが、免疫が全体的に落ちている。がんも免疫ですし、風邪引かないのも免疫ですし。心の問題、生きる力も関係してくる。そういったきれい社会は、自分自身を家畜化してるんじゃないかということで、尾本先生を中心として研究会を作りました。その記録がこれ。
われわれは自分で家畜化に導いているんじゃないか、ちいさな家畜小屋を与えられて、コンビニ食を与えられて…。この家畜小屋に住んでいるのがいまの若い人たち。本当に弱くなっています。少子化は、単純に女の人を働きやすい環境におけばいいという問題じゃないと思います。生きる力がすごく弱くなっている。
『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』 レスリー・デンディ、メル・ボーリング(紀伊國屋書店)
研究も、自分の体でやるくらいの気持ちを持たなきゃいけないと思っているんですけど、そんな人たちの記録です。私のことも書いてあります(注:先生はかつて自分のおなかの中に『キヨミちゃん』というサナダムシを飼っていた)。
とくに寄生虫なんかはね、自分の体で研究しないとわからないんですよ。人のサナダムシを犬にかけたって大人にならない。人の体でしか大人にならない。でも動物のサナダムシを人のおなかに入れるとものすごく悪さするんです。こういうのは実験動物ではできないんですよ。だからどうしても自分でやっちゃうんですけどね。
”宇宙船地球号” 山本敏晴医師の本棚
山本敏晴 医師プロフィール
「1965年生。医師・写真家・国際協力師。12歳の時、南アフリカの人種差別に衝撃を受け、中学時代から数十か国を撮影。「本当に意味のある国際協力」を考え続け、アフリカや中東で医療援助。NPO法人宇宙船地球号を創設。
「持続可能な世界」の実現を目指す。「世界と恋するおしごと」「国際協力師になるために」など著書多数。
『火の鳥』手塚治虫(角川文庫)
最期の海の波の話を人生に例えている部分が私には印象に残っています。
『2001夜物語』 星野之宣(双葉社)
「火の鳥」に匹敵する壮大な人類の宇宙世紀叙事詩。SF漫画。
『モモ』 おーなり由子(新潮社)
犬の一生を描いた絵本。最も感動した。泣きまくり。
『織田信長』 山岡荘八(講談社)
人生は、大きな夢を持ち、それに向かって挑戦していくこと。
『三国志』 吉川英治(講談社)
二千年前の話とは思えないほど、現代社会を反映。曹操が好き。
”医学教育に尽力” 中島宏昭医師の本棚
中島宏昭 医師プロフィール
1945年生まれ。71年、昭和大学医学部卒業後、同大医学部第一内科入局。86年、米国ミネソタ州にあるMayo Clinicの免疫・アレルギー部客員研究員として2年間留学。その後、東京都立荏原病院内科部長、昭和大学横浜市北部病院呼吸器センター長・教授、同病院副院長を経て、昭和大学客員教授。また公益財団法人世田谷区保健センター所長、土佐市立土佐市民病院内科非常勤医師も務める。
『天国の五人』ミッチ・アルボム(NHK出版)
最期の海の波の話を人生に例えている部分が私には印象に残っています。
『モリー先生との火曜日』ミッチ・アルボム(NHK出版)
人生について考えさせてくれます。
『死にゆく者からの言葉』鈴木秀子(文春文庫)
黙ってじっくり聴くことの力を教えてくれます。そして人には色々な人生があることを。
『死ぬ瞬間』E・キューブラロス(読売新聞社)
これは読みでがありますので、医学部に入ってからでよいと思います。医師、医療者にとってはバイブルと呼ばれる本のひとつです。
『道は開ける』デール・カーネギー(創元社)
人と理解しあうことで道は開け、共感することで人は動くことを説いています、昔学生運動をした時に非常に参考になりました。
洗礼を受けてはいませんが、19歳の時からほとんど毎朝読んでいるのが、新約聖書です。1日1章読み続けています。初めは批判しようと思って読んだのですが、今は毎日聖書からの語りかけを聴く気持ちです。道元禅師の言葉を弟子が書いた「正法眼蔵髄門記(しょうぼうげんぞうずいもんき)」も、日本文の力強さと内容の深さに感嘆しました。医学部に入ってから読まれたらよいと思います。
今回は受験生用に、あまり長くない本を薦めましたが、じっくり読んでほしいと思う本もあります。個人的にはドストエフスキーの本が好きです。しかし本からは個人によっても、読む時期によっても受け取るものが違いますので、あくまで参考にという思いです。
※「モリー先生との火曜日」と「死ぬ瞬間」は、YMSの推薦図書になっている
”ブラックジャック” 南淵明宏 医師の本棚
南淵明宏 医師プロフィール
1958年 大阪生まれ。1983年奈良県立医科大学卒業。1985年国立循環器センターレジデント、1989年シドニーセント・ビンセント病院フェロー、1991年国立シンガポール大学、1992年新東京病院などを経て、1996年6月医療法人公仁会大和成和病院(神奈川県大和市)に心臓外科を開設。専門は虚血性心疾患の外科治療(心拍動下冠状動脈バイパス手術)。日本胸部外科学会認定医、医学博士。昭和大学横浜市北部病院 循環器センター 教授。
『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 ―フェルミのパラドックス―』 Stephen Webb(青土社)
これは本当にすばらしい本。もう10回くらい読んでいる。
「ひろい宇宙空間において、人類と同じ生命体がいる星はいくつあるか」という問いに対して、物理学、生物学などありとあらゆる科学の分野から合理的に推論して、最終的に「結局人類しかいないだろう」という結論を導き出す。ひとつのことを突き詰めるのに、さまざまな手段を使う、まず疑ってみて、それから考えを進めていくという、知的な考察方法がわかる。これは科学啓蒙書としてぜひ高校生のレベルで読んでほしい。逆に、この本に書かれていることが科学のすべてといってもよい。
『国盗り物語〈1〉斎藤道三』 司馬遼太郎 (新潮文庫)
この本をはじめとして、学生時代はよく司馬遼太郎を読んでいた。手塚治虫もそうだが、司馬遼太郎の描く主人公というのは基本的に俗物で、性格がいびつで、欲が強い。自意識過剰で、わがままで、よく言えば自分の信念を、悪く言えば自分の欲望を叶えるために突き進んでいく。俗物が世の中を動かしている。その登場人物の「かっこ悪さをものともしない」というのが魅力的だった。18、19の若いころというのは、自分の人生を壮大に思い描くときだと思うので、そういうときにこそぜひ読んでほしい本である。
『三国志』 横山光輝 (潮漫画文庫)
これは人間として、絶対読まなくてはならない!
登場人物それぞれの魅力ももちろんだが、ひとつのテクストとして、いろいろな話の原点が三国志にはある。日本のいろいろな話の原点が「伊勢物語」にあるように。日本でいうと、「万葉集」の歌から人の気持ちを慮るということを学ぶのもよいと思う。
あとは映画も大好きで、「野いちご」「汚れなき悪戯」「禁じられた遊び」などは何度も繰り返し見ている。ただ、僕は決して人よりたくさん映画を観ているわけではない。先ほども言ったように、人より「感動する力」が強いのだと思う。他の人が素通りしていくところを拾っていて、結果的にそれが自分の引き出しになっている。いろんな衝撃を受けることで、自分の原点となるものができていく。それは入試を突破するためにも、医師となってからも必要なものだと思う。大学で「患者の立場に立って・・・」などと教わったところで、何がわかるというのか。
医学生も、勉強が忙しいから本も読めない、などと言っていてはいけない。どんどん本や映画に触れ、衝撃を受けて、感性を磨いていってほしい。
”平成の赤ひげ” 鎌田實医師の本棚
鎌田實 医師プロフィール
東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作った。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。
現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET代表、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員(他)。
『メメント・モリ』 藤原新也(情報センター出版局)
この本の写真を初めて見た時は衝撃を受けた。人間の死体を2匹の野良犬が食っている。そんな写真を見て君たちはどう思うだろうか。凄惨な、あるいは残酷な印象を受けるだろう。
しかし、その写真の下にたった1行、言葉がある。「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。」病院で薬漬けになって、何本も管を刺されたまま死ぬことを想うと、死というものは多様でよいのではないかと思う。そしてそれは同時に生の多様化を認めることにもなるのだ。
『カラマーゾフの兄弟(上・中・下)』 ドストエフスキー(新潮文庫)
18歳の時に初めて読んだ。その後何度も読み返している。物語の最初の方は理屈が多く難渋な部分もあるので、本を読み慣れていない人は、下巻だけを読むのもよいだろう。また、最近新訳が出たのでそれなら読みやすいはず。
この本を読んで感じることは、人間は誰でも心の中にケダモノを飼っていて、それを暴れさせないように大人達が色々な仕掛け —- 教育であったり、宗教であったり —– を作っているってこと。この本には人間のあらゆる本姓が描かれており、それをコントールすることの意味とその難しさが見事に表現されている。
『だいじょうぶ だいじょうぶ』 いとうひろし(講談社)
これは絵本なのだけど、柳田邦夫が言うように絵本には力がある。それは恐らく先に述べた“隙間”の持つ力であろう。
どれだけ多くの患者が、「だいじょうぶ」と言ってもらい救われているか。この「だいじょうぶ」という言葉にも不思議な力がある。患者は共感してもらうと心を開く。医療者として患者の心を開き、患者を支えていかねばならない。
『田村隆一全詩集』 田村隆一(思想社)
詩も音楽も同じだが、多くの”隙間”を持つ素材として、想像力を養うには有効な媒体である。中には解釈の難しいものもあるが自分流に読めればいいんじゃないか。好きな詩の2つや3つは持っておきたい。
『どくとるマンボウ航海記』他 北杜夫(新潮文庫)
父である斎藤茂吉は医師でもあり、北杜夫自身もそして兄も医師という医家の出である。
彼の作品は大きく2種類に分類されると思うが、シリアスな『楡家の人々』や『夜と霧の隅で』などもよいが、軽いタッチで、好奇心をくすぐる『どくとるマンボウ』シリーズが好きだ。医師も科学者も多くは好奇心によって新しい知識や考え方を 身につけていくのだ。